担保物権法

最判平成10.03.26(平成6年(オ)第1408号)

はじめに 債務者が自己所有建物を賃貸すると、賃借人が第三債務者となる。この第三債務者への債務者の債権は、一般債権者の差押えの目的ともなるし、抵当権者の物上代位の差押えの目的ともなる。そこでこの両差押えが同時になされた場合、つまり競合が生じた...
物権法

最判昭和40.11.19(昭和40年(オ)第614号)

はじめに 他人物売買、すなわち第三者が所有する目的物を売主が買主に売る売買契約は、契約として当事者間で有効である(§561)。売主が第三者から目的物の所有権を取得すると、その目的物の所有権が買主に移転するのはいつか?所有権を含めた物権の移転...
担保物権法

最判平成13.03.13(平成11年(受)第1345号)

はじめに 債権者が自己の債権を確実に回収しようとする場合、将来発生する債務者を債権者とする受働債権で相殺するということがある。これは、債務不履行を防止するという意味での債権担保となる。債権者が賃借人で債務者が賃貸人である場合、確実に発生する...
債権各論

最判平成05.10.19 (平成元年(オ)第274号)

はじめに 請負人が建築材料の主要部分を提供して建物を完成した場合、その建物の所有権は、請負人に帰属するというのが判例である。そうであるならば請負人が材料を提供して仕事した建築完成前の出来形部分の所有権も、請負人に帰属するはずである。ところで...
物権法

最判平成24.03.16(平成22年(受)第336号)

はじめに 取得時効完成後の第三者が所有権移転登記を具備した場合は、占有者は時効取得を第三者に対抗することができない。再度占有者が占有継続して取得時効完成した場合、第三者に登記がなくても時効取得を対抗することができる。つまり再度の取得時効完成...
物権法

最判平成08.10.29(平成5年(オ)956号)

はじめに 「第三者」(§177)は、「登記欠缺を主張する正当な理由のある第三者」であることは確立した判例である。そしてこの「第三者」の範囲に背信的悪意者が含まれないことも、また判例で認められている。そうであるならば、二重譲渡で背信的悪意者か...
物権法

最判平成18.01.18(平成17年(受)144号)

はじめに 「時効完成後の第三者」と時効完成した占有者との間ではいわゆる「対抗関係」となり、先に対抗要件を具備した方が確定的な権利者となる。たいていは「時効完成後の第三者」が先に対抗要件を具備することから、彼が時効完成した占有者の登記欠缺を主...
物権法

最判昭和46.11.05(昭和42年(オ)468号)

はじめに 民法では、意思表示のみで物の所有権が移転する(§ 176)。「一物一権主義」が厳守されるならば、第1譲受人に所有権が移転すると、第2譲受人は登場しないはずである。しかし我が国の法制では、第2譲受人の存在を肯定しつつ、譲受人間での所...
担保物権法

最判平成14.03.12平成12年(受)第890号

はじめに §372が準用する§304 I 但の「払渡し又は引渡し」については、学説ではいろいろと言われている。債権譲渡されただけであれば、これに該当しないとする最判H.10.01.13(平成6年(オ)1408号)という判例がある。そうすると...
総則

最判昭和42.07.21(昭和40年(オ)1270号)

はじめに 時効制度、特に取得時効の制度趣旨として、「権利に眠る者を保護しない」制度とか、「長期間の事実状態を是認する」制度とか説明されることがある。そうすると、被害者たる本来の権利者を「権利に眠る者」として非難するのは場合によっては酷であり...