XがYに損害賠償請求権を有するための根拠条文について明らかにしたが、それだけでは損害賠償請求権という具体的な法律効果は発生しない。全ての要件を充足する事実がある場合にはじめて、損害賠償責任をYに負わせることができる、という法律効果が発生することになる。不法行為に基づく損害賠償請求権が成立するためには、民法709条が事実に適用されねばならない。「その5」の挙例に従って考えてみよう。
① Yの故意または過失 ② Yの侵害行為(自転車走行中にXにぶつかる) ③ 損害の発生(打撲傷:治療費5万円) ④ ②③の因果関係 |
それぞれ()内の事実が要件を満たす事実であり、これを「要件事実」ともいう。そして①から④のすべての要件を満たす具体的な[要件]事実をXが主張・立証することができれば、XはYに対して損害賠償渡請求権を主張して、最終的に裁判所がYに対してXに損害を賠償することを命ずる判決を下し、さらにはYが判決に従わない場合には強制執行により履行を強制することになる。挙例で、Xの②③の主張立証は容易であろうが、その他に①のYの故意・過失④の因果関係の存在という要件を充足する[要件]事実があることをXは主張しなければならない。相手方である加害者Yがそれを認めない場合にはさらにその[要件]事実があることを立証しなければならない。
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