基礎理論(その2)-民事紛争と民事訴訟

基礎編

 判例解析をするための基礎理論をこれから数回に分けて解説する。

(1)私人間の法律紛争

判例解析をする対象である民事判例は私人間の民事紛争を扱う。私的な法律関係において、一般人である私人同士での法律紛争にはいろいろな種類がある。このような場合、例えば、「貸した金を返せ」とか、「自分の土地を明け渡せ」とか、「発生した損害を賠償せよ」というように具体的に相手方に対して、法律上の要求、すなわち「請求」をする。この請求する権利を「請求権」という。または「自分にこの権利があることを認めろ」と具体的な権利の存在を認めるように請求する。その請求が法によって基礎づけられるならば、それは国家によって強制的に実現されることになる。「法」とは、社会関係を規律し、それを国民によって守られるべきものであり、もしも守られない場合に、国家がそれを強制的に守らせるものである。

 (2) 民事訴訟

 私人間の法律紛争を、裁判所への訴え(訴訟)を通じて、民法等の私法を適用して、国家の力によって最終的な、しかも安定的な解決を図る裁判が、「民事訴訟」である。民事訴訟の手続が民事訴訟手続きである。民事訴訟を提起する当事者を「原告」といい、相手方を「被告」という。しかし「被告」といっても、単なる訴訟の相手方を指すに過ぎず、刑事被告人のようなマイナスのイメージはない。

(3) 訴訟物

民事訴訟では、先に挙げたような請求権や具体的な権利が存在するかどうかを判断する。また場合によっては、当事者関係で、親子関係とか、雇用関係、といった法律関係が存在するか否かを判断する。このような民事訴訟の、テーマ・対象となるものを「訴訟物」という。言い換えると、訴訟物とは、民事訴訟の対象となる法的な権利または法律関係をいう。

したがって民事訴訟とは、訴訟物が存在するかどうかの裁判所による判断である。判決は訴訟物が在るのか、ないのか(訴訟物の存否)の判断の結果である。原告の訴訟物があると判断されれば、「請求認容判決」が下され、ないと判断されれば「請求棄却判決」が下される。

以上のことを簡単にまとめると、

民亊訴訟=訴訟物の存否を判断する裁判
判  決=訴訟物の存否の判断
訴 訟 物=訴訟の対象である、一定の権利または法律関係

判例解析に当たっては、訴訟物をしっかり押さえることが重要である。具体的に訴訟物がどのようなものかは、基礎理論(その3)で扱う。

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